地球温暖化の影響でしょうか、最近の夏は極端に蒸し暑い日が多くエアコンなしで過ごすことができません。
増える一方の電気代を何とか節約しようと断熱リフォームをする方が増えていますが、これは健康面でも多くのメリットをもたらします。
住む人を健康にする断熱リフォームを取材しました。
◆血圧を引き下げ脳卒中の発生リスクを軽減
“断熱”に対して多くの方が抱いているイメージは「冷暖房費が安くなる!」ではないでしょうか。
もちろんこれは間違いではありませんし、 断熱リフォームをされる方のほとんどはこれを一番の目的にしています。
しかし、断熱リフォームのメリットはこれだけではありません。実は他にもさまざまなメリットがあるのをご存知でしょうか。
中でも特にみなさんにぜひ知ってもらいたいのが「住む人を健康にする」という点です。
どういうことでしょうか?
もう少し詳しく解説していきたいと思います。
断熱リフォームと健康がどう結びつくのでしょうか。まずは、それを示す一つの実証実験について見ておきたいと思います。 これは一般財団法人ベターリビングが断熱リフォームと血圧の関係について調査したもので、結論から言うと断熱リフォーム住宅は最高血圧と最低血圧を下げ起床後の血圧上昇も抑制する効果があるということが分かりました。
ご存知の通り、高血圧は循環器疾患につながる最も重要な危険因子であり、ときに脳卒中や虚血性心疾患などを引き起こします。
断熱リフォームは快適な住環境を創り出すだけでなく、それによってこれら健康リスクを軽減する働きが期待できるというわけです。
◆冬は1年のうちでいちばん死亡者数が増加する季節
断熱によって建物内の温度をある程度一定にすることは死亡リスクの軽減にも繋がります。
みなさんは1年を通じて死亡者数が最も多くなる時期と、もっとも少なくなる時期をご存知でしょうか。
実は死亡者数が最も多いのは1 月、12月で、逆に少ないのは6月、7月、つまり寒くなればなるほど死亡者数は増えていきます。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
一番の原因は家の断熱性の低さにあると言われています。
日本の家は海外と比べると非常に性能が高いと思われている方も多いと思いますが、実は省エネの観点から見れば特段優れているわけではありません。
断熱性能などについて定めた「省エネ基準」を満たす家はいまだに10%以下の普及率にとどまっていることからもそれは明らかです。
断熱がしっかりしていないとどんなことが起こるのでしょうか?
同じ家の中なのに部屋によって室温に大きな差が生じるため、例えばヒー トショックのような死亡事故が起こります。
これは家全体の温度が一定であれば防ぐことができます。
断熱がいかに重要なのかお分かりいただけるでしょうか?
最後に実際の事例ご紹介しておきます。
神奈川県の箱根に在住の田原一郎さんは3年前に築40年になるご自宅を断熱リフォームしました。
きっかけはヒートショックでお父様を亡くされたことでした。
箱根と聞くと観光や温泉などをイメージする方が多いと思いますが、山深い場所とあって冬はかなり寒さが厳しくなります。
田原さん宅はある程度の寒さ対策はしていたものの、それでも建物内には場所によってかなりの温度差が生じ、結局それが原因でお父様を亡くすことになってしまいました。
「リビングはエアコンのおかげで常に20°Cくらいありますが、脱衣場は冬ともなれば一桁台の温度しかありませんでした。これでは、また いつ父と同じことが起きても不思議ではないと思い、断熱リフォームすることにしました」
結果、屋内の温度差は緩和され脱衣場も寒さを感じないまでに改善されたそうです。
夏も快適で電気代は年間で約2割ほど削減できているそうです。
断熱リフォームは省エネだけでなく、住む人の健康を考える上でもとても重要な役割を果たします。 ◆『住生活新聞』2020年6月号(048号)より
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