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【相続不動産相談所】資産凍結のリスクを回避できる 「家族信託」とは?




皆さんは「家族信託」という仕組みをご存知でしょうか? 最近、話題に なっていますので、テレビや雑誌などで何となく目にしたことがあるという方もいらっしゃるかもしれませんが、詳しく知っているという方は少ないと思います。 今回は、そんな「家族信託」を利用した相続対策について事例を交えてご紹介します。

「父が認知症になってしまった。財産分与について何も話していなかったが、一体どうなってしまうのか...」 神奈川県藤沢市にお住まいの渡辺幸太郎さん(仮名)が相続について相談したいと市内の税理士事務所を訪ねたのは2010年、当時51歳の時 のことだったそうです。

普通であれば、家族構成や資産の状況などを聞き取りした上で適切な相続対策の手続きを行っていくことになりますが、渡辺さんのケースは特殊な事情があり、通常の手続きでは相続対策ができない状態になってい ました。

被相続人である当時81歳のお父様が認知症で正常な判断ができ なくなってしまっていたのです。 社会の高齢化が進んでいる現代においては、渡辺さんのご家族のよう な事例が増えています。 高齢による認知症だけでなく、病気や事故が原 因で財産管理ができなくなるケースもあります。 こうした不慮の事態に対 処するためには一体どうすればよいのでしょうか?

そこで注目したいのが「家族信託」という仕組みです。

これは、財産 をお持ちの方が病気や事故、認知症などで正常な意志判断ができなくな る前に、配偶者やお子さんたちに財産の管理や活用を任せるための仕組みです。 できてからまだ14年ほどしか経っていない、比較的新しい制度です。 似たものに「遺言信託」という制度がありますが、こちらは遺言者が亡くなった後にしか効果は発生しません。 そのため、遺言者が何かしらの事情で意志判断できない状態になってしまっても、存命中は誰も財産を管理・活用することができません。

一方で「家族信託」は、被相続人が生前の段階で本人以外が財産の管理・活用をできるようにするものです。 つまり、正常な意志判断ができ なくなってしまった親に代わって、その配偶者やお子さんが財産を管理・ 活用しても構わないというわけです。 ここで、2012年に田中真一さん(仮名)が行った「家族信託」の事例をご紹介します。

田中さんは当時75歳で、一つ歳下の奥様と、40歳と38歳になる2人の息子さんがいました。 息子さんたちにはさらにそれぞれ お1人ずつ子がおられました。 田中さんはもともと農家をしていたのですが、当時より30年ほど前に、 持っていた土地に3棟のアパートを建てていました。 通常であれば相続対策はこれで万全です。 もし田中さんが亡くなった後は、奥様と2人の息子さんで財産を分け合うことになります。 しかし、実はすでにこの頃、田中さんの奥さんには認知症の症状が出始めていました。

また、田中さん自身も体調に不安を感じるようになって いたため、税理士に相談の上、お子さんたち2人を「受託者」に、そし て2人のお孫さんを「受益者」とする「家族信託」を行うことにしました。 その際、アパートなどの不動産はご長男側に、現金などの資産は次男側に相続していくことを取り決めました。 不動産と現金資産の相続先を明確に分けたのは、不動産の持分共有化を回避するためでした。 通常、相続人の指定がない不動産は、相続人が複数いると持分共有で相続されます。 田中家の場合、お子さんが2人いるので、土地を2つに分割して相続することになります。

土地の分割を避けるために、どちらか一方が相続する 不動産に相当する現金を支払うという方法もありますが、これは現金がないと成立しません。 仮に分割が何代も続けば、もともと広大だった土地も どんどん細分化されていってしまいます。

しかし、「家族信託」を利用すれば、あらかじめ「不動産は○○」、「現金は○○」といった具合に二次 相続以降の資産の承継先を指定し、資産が細分化するのを防ぐことができます。 ここまで見ると「家族信託」はメリットばかりのように見えますが、もちろんデメリットもないわけではありません。 所得税の申告で損益通算することができなかったり、身上監護権がないといった点は「家族信託」ならではのデメリットだといえるでしょう。

ちなみに田中さんは「家族信託」の手続きを終えた半年後に脳卒中で 倒れ、そのままお亡くなりになりました。 突然のことでお子さん方も大変驚かれたそうです。 仮に「家族信託」をしていなかったら、財産の相続すら通常の手続きではできなくなるところでした。 相続対策にはいろいろな方法がありますが、どの方法が最適なのかは 財産の持ち主の家族構成や資産状況などをよって異なります。 皆さんも今 のうちに将来的な相続について考えてみませんか。

◆『住生活新聞』2021年4月号(058号)より

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