
ワンちゃんが快適な暮らしを送るためには、ワンちゃんの生活習慣に配慮した住環境を用意してあげる必要があります。
例えば床。
人が暮らすだけなら標準的なフローリングで問題ありませんが、ワンちゃんと一緒となると、滑りにくさや傷付きにくさなどを考慮して選ばなければなりません。
今回は愛犬との生活を快適にするペットリフォームの事例をご紹介します。
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岸本俊介ご夫妻が神奈川県茅ケ崎市に引っ越してこられたのは今から2017年のこと。
お二人とも趣味がサーフィンということで、かねてから湘南の海に近い場所に住みたいと家探ししていたところ、丁度手頃な中古の戸建住宅が見つかり、都内から移住したそうです。
購入した家は築35年の木造住宅。前の持ち主がきちんと手入れしていたようで、特段目立つような傷みもなく、そのまま住めそうな状態でした。

しかし、ご夫婦は新生活をスタートさせるにあたり、あえて300万円ほどをかけて大がかりなリフォームを行うことにしまいした。
なぜ、そのままでも問題のないのに大金をかけてリフォームをすることにしたのかというと、それは愛犬のためでした。
お二人はお子さんがいない代わりに2匹のワンちゃんを飼っていらしたのですが、そのうち1匹は先天性の病気で片足が不自由だったのです。

そのままでも問題なさそうだというのは、あくまでも人が暮らす場合であって、それがそのままワンちゃ んにも当てはまるとは限りません。 壁紙やフローリングもペット対応ではない一般的なものだったそうですし、何より部屋と部屋の間にかなりの段差がありました。
これでは足の不自由な方のワンちゃんは気軽に家の中を歩き回ることができません。
もしかしたら引っかかって転んで怪我をしてしまうかもしれません。
そこでご夫婦はいつまでもワンちゃん2匹が快適に暮らせるようにとペット共生リフォームを行うことにしました。
まずは玄関です。
35年前の家らしく、床までは30cmくらいの高さがありました。
これでは足の悪いワンちゃんが誤って飛び降りたりすると怪我をしてしまうかもしれません。
そこで、端に歩いて上り下りできるように小さなスロープを設置しました。
つづいて床ですが、傷が付きにくく滑らないフローリングに全面貼り替えました。
汚れ防止のコーティングもされているので、ずっと衛生的な状 態を保つことができます。
さらに、すべての部屋の境にあった段差はなくし、全体をバリアフリー化しました。
これでワンちゃんが引っ掛かって転んだりすることはありません。
次は壁紙です。
こちらは消臭効果があり、万が一引っ掻いても簡単に破れない丈夫な壁紙に貼り替えました。
リビングについては腰高パネルも設置しました。
リビングから2階へと上がる階段の下にはデッドスペースがあったため、 うまく活用してワンちゃんのプライベートスペースを設けました。
最後に外回りです。
まず玄関の外には、シャワースペースも新造しました。
これは、サーフィン帰りのご夫婦が家の中に入る前に砂を洗い流せるようにするのと、散歩帰りのワンちゃんの足を洗うためのものです。
また 6mmほどの小さな庭は、もともと砂利が敷いてありましたが、あえてそれを全部撤去し、芝生を敷きました。
周りは目隠しを兼ねたフェンスで囲われているため、ワンちゃんを放しておいても安心です。
「プライベートスペースは2匹とも大のお気に入りで、揃ってこもることが多いです。消臭効果のある壁紙のおかげで、遊びに来た友達も犬のニオイは全然しないと言っていました。とても快適に毎日を過ごすことができ ています」
よく、ペットが快適だと感じる家は人間にとっても快適だといいます。
逆に言えば、人が居心地が良くないと感じる家は、ペットにとっても居心地は良くありません。
長く快適なペットライフを実現するために、みなさんもこの機会にペットリフォームを検討してみてはいかがでしょうか。 ◆『住生活新聞』2020年9月号(051号)より