家の柱や壁をボロボロにするシロアリは基本的には季節に関係なく1年中活動します。
中でも雨が多く湿度の高い梅雨や台風が多発する夏付近はシロアリにとって最も過ごしやすい時期だといわれています。
家族の憩いの場である家をシロアリ被害から守るにはどうしたら良いのか、専門業者に取材しました。
「夕飯を食べているときに蛍光灯に羽アリが数匹たかっていた。今までうちでは見たことなかったのに、一体どこから飛んできたのだろうか...。気になるから一度調べに来て欲しい」
ある日、S社長が経営するシロアリ駆除サービスの会社に以上のような 内容の電話がかかってきました。
翌日、早速現場を訪れたS社長とスタッフは、電話をかけてきた男性にさらに詳しい聞き取りを行いました。
その結果、次のようなことが分かりました。
・羽アリが出たのは今年が初めてで、一度見かけて以降、何度も見かけるようになった
・家は築30年の木造住宅
・これまで大掛かりなリフォームやメンテナンスなどはしたことがない
話を一通り聞き終わると、S社長は男性に対して、
「これはもしかしたらシロアリの仕業かもしれませんね。そうでないことを祈りたいところですが、とにかく一度床下などを調べてみましょう」
と告げました。
S社長はなぜ、羽アリが出ただけでシロアリが発生しているかもしれないと考えたのでしょうか?
実は、シロアリや羽アリは庭にいる一般的なアリとは異なり普段の生活の中で見かけることはほとんどありません。
普通にその辺を飛び回っている虫ではないのです。
つまり、自宅や周辺で羽アリを見掛けたということは近隣でシロアリの被害に遭っている家があるかもしれないということになるのです。
もちろん、今回電話をかけてきた男性宅が被害を受けているとは限りません。
もしかしたら隣の家かもしれないし、さらに向こうの家かもしれません。
いずれにせよ、被害が大きくならないように一刻も早く発生源を突き止めなければなりません。
S社長とスタッフはとりあえず家の中を確認し、発生源となりそうな場所を探すことにしました。
そして1時間後、ある場所に目を付けました。
「勝手口付近の床が多少ブカブカしていますが、これはいつからですか?」
S社長が訪ねると、男性は
「1年くらい前からだったと思います。何せ古い家なので、床板が腐ってしまったのかと思っていました...」
と答えました。
周辺にはところどころカビも生えていて、だいぶ湿気がありそうな雰囲気でした。
いずれにせよ、そのまま放置しておいてうっかり乗っかってしまうと危ないので床板はいったん剥がすことにしました。
すると、スタッフが一枚一枚床板を剥がしていく最中、床下から1匹、また1匹と、羽アリ が上がってきました。
「どうやら予想した通りの結果になってしまったようですね。この下でシロアリが発生しているようです」
S社長の言葉を聞いた男性はあわてました。
「やっぱりシロアリですか!? このままだと、うちは食われて潰れてしまうんですか??」
もちろん、シロアリが発生したからといってすぐに家が倒れてしまうということはありません。
しかし、そのまま気付かずに放置しておくといずれ柱や量が食い尽くされて、家が潰れてしまう可能性は十分あります。
S社長は答えました。
「被害の状況にもよりますがまだそこまではならないと思います。とにかく一刻も早くシロアリを駆除し、食われてしまった柱を新しいものに交換した方が良いでしょう」
男性はその場でシロアリ駆除をS社長に依頼。
電話を受けた時点でシロアリの可能性が高いと考えていたS社長らは道具を一式もってきていたため、その場ですぐに駆除作業に取り掛かりました。
幸い、まだ実際に食われていたのは柱一本だけだったため、作業は当日で完了。
あとはリフォーム業者に頼んで柱を修理してもらえば、処置は完了ということになりました。 「湿度の高い台所の床下はシロアリが発生しやすい場所です。浴室や洗面所周りも注意が必要です。床板がブカブカしたり、柱や壁に腐食が見ら れた場合は、シロアリが発生している可能性があるため、すぐに専門家 に相談した方が良いでしょう」
シロアリはとにかく湿気の多い場所を好みます。 雨量が増え、床下に湿気が溜まりやすいこれからの季節は特に注意が必要です。 普段以上に 換気を心掛けて湿気が溜まらないようにしましょう。 ◆『住生活新聞』2020年7月号(049号)より
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