リフォーム工事を巡るトラブルが後を絶ちません。
消費者センターには、
「工事がいい加減だった」
「最初に聞いていたよりも高い金額を請求された」
「前金を支払ったのに、いつまで経っても着工してくれない」
といった相談が日々寄せられており、その数は毎年増えているといいます。
トラブルに巻き込まれないためにはどうすればよいのか、実例をもとに対策について解説します。
「屋根の防水工事をしたのにたった1年で雨漏りが発生した。業者に再度修理を頼んだが、その半年後にまた雨漏りが発生した。あまりにも工事がいい加減で腹が立った」
こう話すのは2012年に地元のリフォーム業者に屋根の防水工事を頼んだという山下邦夫さん(仮名)です。
山下さん宅は当時で築30年の木造戸建て住宅。
経年による劣化で屋根瓦を固定している漆喰に亀裂が入って雨漏りが発生したため、たまたまタイミングよく新聞の折り込みチラシで見た近くのリフォーム業者に防水工事を依頼しました。
屋根の点検を行った業者が出した見積り金額は75万円。
内訳は「漆喰 補修・塗装作業費」が50万円、「足場設置費」が25万円となっていました。
他の業者に相見積もりを取っている間にまた雨漏りが発生しても困ると考えた山下さんは、提示された金額を了承し、すぐに契約を交わしました。
間もなく工事が始まり1週間ほどで工事は完了したそうです。
しかし、「これで安心」と思ったのも束の間、それから1年後の豪雨で山下さん宅は再び雨漏りの被害に遭いました。
「去年しっかり修理したはずなのに一体どうなってるんだ!」
山下さんはすぐに工事を頼んだ業者に連絡しました。
やってきた業者は
「状況を見てみないと何とも言えないので、一度屋根に上がって点検します」
と屋根の上に上がっていきました。
そして30分ほどして下りてきて言いました。
「修理した箇所とは違う部分に新たに亀裂が入っていたみたいですね。去年の工事では無かった部分なので、こちらはまた別途、修理が必要になります」
その言葉を聞いた山下さんは、
(なぜ1年前の点検時にもっとしっかりチェックをしてくれなかったのか)
と思いながらも背に腹は代えられないからと、結局、その業者にそのまま再度修理を頼みました。
2回目にかかった修理費は35万円でした。
2度にわたる修理でとりあえず雨漏りはなくなったものの、どこか納得のいかない山下さんは知人に別の工事業者を紹介してもらい、修理してもらった箇所の確認をしてもらうことにしました。
点検を終えた工事業者は山下さんに次のように述べました。
「素人目にはきちんと修復されたように見えますが、実際はかなりの手抜き工事ですね。本来、傷んだ漆喰は全部剥がし、それから新たな漆喰を施工しなければなりません。しかし、山下さん宅の修理を行ったリフォーム業者は古い漆喰を剥がさずにただ上から塗り重ねただけ。これだとすぐに上塗りした漆喰が剥がれて元あった亀裂から雨水が侵入してしまいます」
「手抜き工事」という言葉を聞いた山下さんはすぐに施工を行ったリフォー ム業者にクレームを言おうと思いました。
しかし、点検を行った業者から
「お手持ちの書類を確認したところ、点検内容や施工計画が分かる資料が見当たりません。また、契約書には施工の保証についても書かれていません。これでは責任を追及することは難しいと思います」
と言われたため諦めたそうです。
仮に山下さんが点検内容や施工計画の内容をきちんと把握していた場合、実際の工事がそれに従って行われていないと分かれば業者に対して再施工や代金の返還を求めることができます。
トラブルに巻き込まれないためにも、リフォームを発注する際は必ずそうした資料の提出を求めるようにしましょう。 ◆『住生活新聞』2021年7月号(061号)より
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